はじめに
私たちは、日常生活でさまざまな「記号(シンボルやアイコン)」を見て、情報を理解しています。例えば、「B(太字)」のアイコンを見てボールド文字を想像したり、信号の「赤」で止まることを理解したりするのは、記号が持つ意味を自然に読み取っているからです。
しかし、これらの記号はすべて同じように働くわけではありません。
アメリカの哲学者 チャールズ・サンダース・パース(C. S. Peirce) は、記号を「アイコン」「インデックス」「シンボル」の3つに分類しました。
この記事では、パースの記号分類をわかりやすく解説し、それぞれの違いを具体的な例とともに説明します。
1. パースの記号分類とは?
パースは、「記号がどのように意味を伝えるか?」という観点から、記号を3つのタイプに分類しました。
分類 | 説明 | 例(身近なもの) | 例(IT関連) |
---|---|---|---|
アイコン(Icon) | 見た目が対象と似ている 記号 | 絵文字(😊)、トイレのピクトグラム | 「B(太字)」のアイコン、ゴミ箱アイコン |
インデックス(Index) | 原因・関連性がある 記号 | 煙(火事のサイン)、温度計(気温の指標) | 赤い波線(スペルミスの指摘)、通知マーク |
シンボル(Symbol) | 文化やルールによって意味を持つ 記号 | 交通標識、国旗 | 「保存」アイコン(フロッピーディスク)、企業のロゴ |
💡 アイコンは「似ている」、インデックスは「関連がある」、シンボルは「ルールがある」記号と考えるとわかりやすい!
2. アイコン(Icon)とは?
アイコン(Icon) は、「見た目がそのものと似ている」記号です。
特徴
✅ 直感的に理解できる(学習しなくてもわかる)
✅ 見た目と意味が直接つながっている
✅ 異文化の人でも理解しやすい
具体例
- 身近な例:😊(笑顔の絵文字)、🚻(トイレのマーク)、🏠(家のマーク)
- IT関連:「B(太字)」「U(下線)」のアイコン、ゴミ箱アイコン、スピーカーアイコン(音量)
📝 ポイント
💡 アイコンは「見た目」と「意味」が一致しているので、学習しなくても理解しやすい。
例えば、「B(太字)」のアイコンは、実際に太くなった「B」の文字を見せることで、機能を直感的に伝えています。
3. インデックス(Index)とは?
インデックス(Index) は、「ある現象が別のものを示す」記号です。
特徴
✅ 物理的・因果的なつながりがある
✅ 何かを指し示す役割を持つ
✅ 文脈によって意味が変わることがある
具体例
- 身近な例:煙(火事があることを示す)、犬の足跡(犬が通った証拠)、温度計(気温を示す)
- IT関連:赤い波線(スペルミスの指摘)、通知マーク(未読メッセージがあるサイン)、Wi-Fiのバー(電波の強さを示す)
📝 ポイント
💡 インデックスは「直接そのものを表すのではなく、何かを指し示す記号」。
例えば、赤い波線は「間違った単語そのもの」ではなく、「スペルミスがある」という事実を指し示しています。
4. シンボル(Symbol)とは?
シンボル(Symbol) は、「文化や社会のルールによって意味が決まる」記号です。
特徴
✅ 見た目と意味に直接的な関係がない
✅ 学習しないと意味がわからない
✅ 社会的なルールや文化に依存する
具体例
- 身近な例:国旗(日本=日の丸、アメリカ=星条旗)、赤信号(止まれ)、数学記号「+」(足し算)
- IT関連:「保存」アイコン(フロッピーディスク)、企業ロゴ(Appleのリンゴ、Microsoftの四角形)
📝 ポイント
💡 シンボルは「約束ごと」で意味が決まるので、学習しないと理解できない。
例えば、「保存」アイコンはフロッピーディスクの形をしているが、現在の若い世代はフロッピーを使ったことがなくても「保存」と認識する。これは、文化的・歴史的な背景によってシンボルとして定着しているためです。
5. アイコン・インデックス・シンボルの違い(まとめ)
分類 | 説明 | 例(身近なもの) | 例(IT関連) |
---|---|---|---|
アイコン(Icon) | 見た目が対象と似ている 記号 | 😊(絵文字)、🚻(トイレ) | B(太字)、ゴミ箱アイコン |
インデックス(Index) | 原因・関連性がある 記号 | 煙(火事のサイン)、温度計 | 赤い波線(スペルミス)、通知マーク |
シンボル(Symbol) | 文化やルールで意味を持つ 記号 | 交通標識、国旗 | 「保存」アイコン、企業のロゴ |
6. まとめ
パースの記号分類を理解すると、なぜ私たちは「アイコン」を見てすぐに意味がわかるのか、なぜ「シンボル」は学習が必要なのかがよくわかります。
✅ アイコンは「似ている」ので直感的に理解できる
✅ インデックスは「関連がある」ので、指し示す役割を持つ
✅ シンボルは「文化的ルール」で意味が決まるため、学習が必要
特に、Wordのリボンやタブのデザイン、ITのUI(ユーザーインターフェース)には、これらの記号が戦略的に使われています。
例えば、「B(太字)」のアイコンはアイコン的要素を持ち、「保存」ボタンはシンボル的な意味を持っています。
💡 このような記号の違いを理解すると、デザインやITのUI/UX設計にも活かすことができます!