フェールソフト(Fail-soft) とは、システムや機械が異常や障害に直面しても、完全に停止するのではなく、性能を低下させながらも最低限の機能を維持し続ける設計や機能のことを指します。以下、具体的な例を列挙します。
コンピュータ・IT関連のフェールソフトの例
- RAID(Redundant Array of Independent Disks)(RAID 5やRAID 6)
→ 一部のハードディスクが故障しても、データの冗長性を利用してシステムが動作し続ける。 - サーバーのフェールオーバー機能
→ メインのサーバーがダウンしても、処理能力を落としながらバックアップサーバーで稼働し続ける。 - クラッシュ時のセーフモード(Windows / macOS)
→ システムが正常に起動できない場合でも、最小限の機能で動作し、復旧を試みる。 - パケットロス時のビデオストリーミングの品質低下
→ インターネット接続が不安定な場合、動画の画質を落として再生を続ける(YouTubeやNetflixなど)。 - ルーターの負荷分散機能
→ 一部の通信経路が遮断されても、残りの帯域幅で通信を続ける。 - データベースのレプリケーション機能
→ メインのデータベースに障害が発生しても、スレーブデータベースで読み込みだけを継続する。 - クラウドサービスの自動スケーリング
→ 負荷が増大しても、一時的にパフォーマンスを落としながら処理を続行する。 - エラーハンドリングを備えたプログラム
→ 一部の機能がエラーを起こしても、システム全体が落ちるのではなく、エラー部分をスキップして動作を続ける。
車・乗り物関連のフェールソフトの例
- エンジンのリミッター(リンプモード)
→ 自動車のエンジンに異常が発生しても、低速走行モードで安全に走行できるようにする。 - 航空機のエンジンフェールソフト
→ 双発エンジン機(ボーイング737など)は、片方のエンジンが故障しても、もう片方のエンジンで飛行を継続できる。 - ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の部分機能維持
→ センサーの一部が故障しても、残りのセンサーを使って最低限の制御を維持する。 - 電車の制御システム(ATC/ATS)
→ 異常が発生しても、速度を落としながら走行を続ける(完全停止せずに、ゆっくりと動く)。
日常生活のフェールソフトの例
- エレベーターの一部機能維持
→ モーターに異常が発生した場合、一部の階でのみ動作するように制限される。 - スマートフォンの低電力モード
→ バッテリー残量が少なくなると、パフォーマンスを落として最低限の機能だけ維持する。 - 自動ドアの部分開閉機能
→ 故障時に完全に開かない場合でも、手動で開けられるようになっている。 - 電気ヒーターの低出力モード
→ 電力が不足した場合、完全に停止するのではなく、温度を下げて動作を続ける。 - エアコンの省電力モード
→ コンプレッサーに負荷がかかった場合、一時的に冷暖房の出力を低下させながら動作を継続する。 - 炊飯器の延長炊飯機能
→ 電圧変動で一時的に加熱が弱くなっても、時間を延長して炊飯を完了させる。
インフラ・その他のフェールソフトの例
- 通信ネットワークのフェールソフト設計
→ 一部の回線がダウンしても、残りの回線で通信を続行する。 - 工場の生産ラインの一部機能維持
→ 特定の機械が故障しても、他の機械で代替処理を行い、完全停止を防ぐ。 - 病院のバックアップ電源(UPS)
→ 停電時でも、医療機器は最低限の電力で稼働し続ける。 - 火災警報システムの部分作動
→ 一部のセンサーが故障しても、他のセンサーで火災を検知できるようにする。 - セキュリティシステムの代替認証
→ 指紋認証が失敗しても、パスワード入力でログインを継続できるようにする。
フェールソフトのポイント
- システム全体が 完全に停止しない(一部の機能が使えなくても、動作を続ける)
- 性能や機能を低下させながらも、最低限の動作を維持する
- 利用者が問題を修復するまで、継続的に動作できる設計になっている
- 安全性や利便性を 完全に犠牲にせずに維持 する
フェールソフトは、フェールセーフ(完全に停止して安全を確保する)とは異なり、「できる限りの機能を維持しながら動作を継続する」ことを目的としています。