「止まる」 → フェールセーフ(安全のためにシステムを停止する)
「動く」 → フェールソフト(性能を落としながらも動作を継続する)
「間違えない」 → フールプルーフ(誤操作を防ぐ仕組み)
「フェールセーフ(Fail-safe)」「フェールソフト(Fail-soft)」「フールプルーフ(Fool-proof)」の2つまたは3つにまたがる例 を挙げます。
① 2つにまたがる例
(フェールセーフ+フェールソフト、フェールセーフ+フールプルーフ、フェールソフト+フールプルーフ)
1. RAID(フェールセーフ+フェールソフト)
- フェールセーフ:HDDが故障してもデータが失われない(RAID 1, 5, 6 などの冗長性)。
- フェールソフト:一部のHDDが故障しても動作を継続可能(ただし、リビルド中はパフォーマンスが低下する)。
2. 飛行機のエンジン(フェールセーフ+フェールソフト)
- フェールセーフ:すべてのエンジンが停止しても滑空し続けられる(グライド性能)。
- フェールソフト:片方のエンジンが故障しても、もう片方のエンジンで飛行を継続可能(双発機以上)。
3. ATM(フェールセーフ+フールプルーフ)
- フェールセーフ:システム障害時にお金が誤って出続けることがないように自動で停止。
- フールプルーフ:カードや現金の取り忘れ防止機能があり、警告を表示。
4. USB コネクタ(フェールソフト+フールプルーフ)
- フェールソフト:接触が不安定でも、一時的に通信エラーを起こすが完全に停止しない。
- フールプルーフ:逆向きには挿せない設計(特に USB Type-A)。
5. 電子レンジ(フェールセーフ+フールプルーフ)
- フェールセーフ:ドアが開いたら、加熱が自動で停止する。
- フールプルーフ:誤作動を防ぐため、開始ボタンを押さないと加熱が始まらない。
② 3つにまたがる例
(フェールセーフ+フェールソフト+フールプルーフ)
1. 自動車のブレーキシステム
- フェールセーフ:ブレーキ液漏れが発生しても、最低限の制動力を確保。
- フェールソフト:一部のブレーキが故障しても、他のブレーキで減速可能(ABSが作動しなくても通常ブレーキは効く)。
- フールプルーフ:ブレーキペダルとアクセルの位置が統一されており、誤操作しにくい設計。
2. エレベーター
- フェールセーフ:停電時、非常ブレーキが作動し急落しない。
- フェールソフト:一部のシステムに障害が出ても、最低限の階数まで移動可能。
- フールプルーフ:ドアが完全に閉じないと動作しないように設計。
3. 飛行機の制御システム
- フェールセーフ:飛行制御システムがすべて停止しても、パイロットが手動操縦できる。
- フェールソフト:一部のシステムに障害が出ても、バックアップシステムが機能。
- フールプルーフ:操縦桿に誤操作防止の機構(スイッチのカバーなど)がある。
4. 銀行ATM
- フェールセーフ:停電時には動作を停止し、不正引き出しができない。
- フェールソフト:通信障害時でも最低限の取引(残高照会など)が可能。
- フールプルーフ:カードを取り忘れると警告音が鳴り、操作を完了しないと現金が出ない。
5. 電車の自動運転システム(ATC / ATS)
- フェールセーフ:速度超過や信号無視が起きると、自動でブレーキが作動し事故を防ぐ。
- フェールソフト:一部のセンサーに異常があっても、最低限の制御を維持する。
- フールプルーフ:運転士の誤操作を防ぐため、ボタンやスイッチの配置が統一されている。
6. 医療機器(例:人工呼吸器)
- フェールセーフ:停電や故障が発生しても、バックアップ電源で一定時間は動作を継続。
- フェールソフト:一部のセンサーが故障しても、最低限の酸素供給を続行。
- フールプルーフ:誤設定を防ぐため、設定変更には二重確認が必要。
まとめ
例 | フェールセーフ | フェールソフト | フールプルーフ |
---|---|---|---|
RAID | データ消失を防ぐ | HDD故障でも動作継続 | × |
飛行機のエンジン | 滑空可能 | 片方のエンジンで継続 | × |
ATM | 障害時に誤出金防止 | 最低限の機能を維持 | カード取り忘れ防止 |
USB | × | 接続が不安定でも動作 | 逆向きに挿せない |
自動車ブレーキ | 最低限の制動力を確保 | 一部故障でも減速可能 | 誤操作防止の配置 |
エレベーター | 急落を防ぐ | 最低限の動作が可能 | ドアが開いていると動かない |
医療機器 | バックアップ電源で動作 | センサー異常時も最低限維持 | 誤設定防止機能 |
このように、1つのシステムが複数の設計思想にまたがることは多い です。
- フェールセーフ は「安全第一」
- フェールソフト は「機能低下しながらも動作継続」
- フールプルーフ は「ユーザーのミスを防ぐ」
システムによっては、フェールセーフとフェールソフトを両立するものもあれば、3つすべての要素を持つものもあります。